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幻想的な森の中を体験、アートビオトープ「水庭」

9月も後半ですが、那須はどんどんと涼しさを感じる季節になってきました。今回はそんな涼しい季節にはもちろん、春夏秋冬と楽しめる人工的に作られた森、アートビオトープ那須の「水庭」をご紹介いたします。建築家・石上純也さんが手がけた「水庭」は、クールジャパンアワード2019を受賞、グッドデザイン2019「グッドデザイン・ベスト100」に選出されるなど多くの賞を獲得した芸術作品です。この記事を通して少しでもアートビオトープの事を知って頂けたらと思います。

水庭
INDEX

アートビオトープについて

 所要時間:那須ガーデンアウトレットから車で20分 

アートビオトープ那須は那須連山山麓の横沢地区に位置し、ひっそりと佇んでいます。敷地内にはレジデンスとスイートヴィラ(宿泊施設)、レストランやカフェがあり、日帰りでもレストラン、そして今回ご紹介する「水庭」やスタジオを利用することが可能です。レジデンスやスイートヴィラ、レストランもデザイン性が高く、ホテルとしてだけでなく建築美や造形美を目当てに来られる方もいるそうです。レジデンスやスイートヴィラ、レストランに興味がある方は公式サイトから詳細をご確認いただけます。

今回ご紹介する「水庭」は水庭のみの見学も申し込み可能です。当日現地で参加する場合は、定員がいっぱいになっていた場合はお待ちいただく時間などが出る可能性もありますので、事前予約がおすすめです。

予約は公式サイトから可能です。また、水庭見学はランチやディナーのセットプランもありますので、スペシャルな日や記念日といった日に利用するのもロマンチックで幻想的な1日をお過ごしいただけるかもしれませんね。

出典:アートビオトープ公式サイト

住所

〒325-0303
栃木県那須郡那須町高久乙道上2294-3

「水庭」というアートの体験

アートビオトープに到着したら、駐車場から少し坂を登るとエントランスが見えてきます。

アーチ型の緑が茂った所がエントランスになります。

秋・冬は少し見え方が変わってくるかと思いますが、春・夏の緑が生い茂る季節ですと緑のトンネルがお迎えしてくれます。

看板を覗くと「Gallary Cafe KANTAN」「水庭受付」「レジデンスご宿泊」と書かれています。

緑のトンネルを抜けると中庭が広がっています。大きな1本の木がまるで出迎えてくれているかのようです。左手側の建物が宿泊できる「レジデンス」となっており、右側が「Gallary Cafe KANTAN」と「水庭受付」となっています。

中庭の奥を進むと水庭の受付が見えてきます。

水庭受付

「Gallary Cafe KANTAN」と「水庭受付」は兼用で同じ建物になります。予約されていない方は、直接スタッフの方に声をかけてくださいね。

中へ入ると、また雰囲気が違う空間が現れます。本や小物、植物が飾られたリビングのような空間でワクワクしてきます。

受付手前の入り口にはたくさんの本が

中へ入り、早速水庭の受付へ。今回取材で参加させていただいたのは「ガイド付き水庭ツアー(以下:水庭ツアー)」になります。
水庭のツアーへ参加する際は利用する上での決まりがありますのでそちらにサインをします。水庭をいつまでも綺麗に保つための取り組みになっていますので、同意の上でご利用してくださいね。

ガイド付き水庭ツアー タイムライン

平日 11:00 / 14:00
土・日・祝日 11:00 / 14:00 / 16:00

利用上の決まりが書かれた用紙とは別に、水庭ツアー参加者に渡される「参加者ステッカー」と「オリジナル 水庭ガイドブック」がついてきます。

「参加者ステッカー」は見えるところに貼って水庭ツアーに参加してくださいね。布製でできた、可愛らしいステッカーでツアー参加後もスケジュール帳に貼ったりと思い出を残せそうです。

「オリジナル 水庭ガイドブック」の表紙、裏表紙に書かれてある木々のスケッチですが、これは水庭に植えられている木々の調査票だそうです。木々を調査したスケッチがガイドブックのデザインになる事に、センスの高さや緻密に啓作されてきた事が伺えます。
ガイドブックは英語翻訳もされていますので、海外の方も楽しめるようになっています。

受付後、ツアー開始になるまでの間、休憩できるスペースが中庭に設けてあります。中庭は宿泊施設の「レジデンス」のお客様も利用できるそうです。

くつろげる空間には「野草茶」も置いてあり、そちらを飲みながらツアー開始までゆっくり過ごせます。

12:00以降のツアーですと「Gallary Cafe KANTAN」が開店しますので、カフェで寛ぐのもいいですね。

待っている間、中庭の気持ちいい空気が時間を忘れさせてくれました。野草茶を作るお湯も鉄瓶のやかんだったりと田舎に帰ってきたかのような、ほっこりするアイテムが心を癒してくれます。

味のある鉄瓶のやかん

水庭ツアーでは土の上や草の上、石の上など足元が安定しない箇所を歩くことがあります。
ヒールや汚れやすい靴で来てしまった方などのために無料で長靴を貸しています。靴を汚したくない方や歩きづらい靴で来てしまった方はこちらを利用してくださいね。
※サイズや繁忙期など、貸し出しが難しい場合もございます。

また、水庭は森のような空間となっています。そのため虫なども水庭で暮らしています。虫が苦手な方のために、虫除けも貸しているそうなので、水庭ツアー前に利用することも可能です。こちらは受付で販売もしております。

準備が整い、水庭ツアーの時間に。
受付付近で待っていると、スタッフの方に呼ばれますので、中庭でお話を聞きます。
アートビオトープのできた経緯などがここで語られます。

アートビオトープ那須は、2017年に閉館したリゾートホテル「二期倶楽部」の創立20周年記念の文化事業として、2006年にオープンしました。「二期倶楽部」はオープン当初から建物の美しさやホスピタリティの素晴らしさ、レストランの質などから多くのお客様に愛されてきたホテルで、このアートビオトープはそうした「二期倶楽部」の感性を継承した施設です。

アートビオトープ那須は創業以来、「アーティスト・イン・レジデンス」というアーティストの支援活動をしており、世界中から若手のアーティストを招いて1ヶ月ほど滞在してもらい、自然の中での制作活動をサポートしています。滞在中にはワークショップが開催され、アーティストとの交流を楽しむこともできます。その時に作られた作品は、中庭など施設のあちこちに飾られています。

創造の小さき庭

そして、こちらの中庭には「創造の小さき庭」という名前がついているそうです。この中庭には「アーティスト・イン・レジデンス」の活動で残された様々なアート作品が点在しています。そういったことから「創造の小さき庭」という名前が付いたと考えると、ただの中庭ではなく一つの美術館を歩いている気分になります。創造の小さき庭は、解説前と後ですとかなり印象が違って見えます。

アートビオトープの活動についてや水庭の説明を聞いた後は、この小道を通り、「水庭」へと向かいます。

小道を抜け、左手の坂を登ると水庭があります。

水庭まではツアーガイドの方が解説しながら進んでくれます。

水庭に続く坂道

水庭までは徒歩約1分ほどで到着するのですが、その途中でも水庭についてガイドさんが語ってくださいます。
水庭の木は現在「アートビオトープ スイートヴィラ」がある場所に自然に生えていた木をそのまま移植したそうです。木を移植する時は通常であれば木を一度掘り返し、倒して根巻きしクレーン車で運ぶのが普通だそうですが、水庭に使う木は13m~16mほどの大きな大木のうえ、樹形を保つことが必要だったため、通常のやり方では移植がが難しいという問題がありました。そこで、木の根を守りながら土ごと掘り返し、日本に2台しかない重機を利用し、木を立たせたまま運ぶドイツ方式が採用されました。この作業は非常に大変な作業で、頑張っても1日4本しか移植することができなかったそうです。

318本の木がこの土地に移植されたそうですが、1日4本のみの移植作業となるため、「水庭」の完成には当初の構想から完成まで、4年の歳月をかけたとのことです。4年かけて作られたお庭…、たくさんの方の根気と努力でできたんだということがわかりますね。そういった「水庭」についての解説を聞きながら進むと、実際に「水庭」が見えてきます。

「水庭」を初めて見て感じたのは、少しだけ高台になっていることでした。
それにも理由がありました。実は、高台の下にはパイプが張り巡らされてあり、「水庭」にある池の水を循環させているそうです。

ガイドさんから教えていただいた「水庭」の見方
「水庭」の外から覗くと、平野のように見えるデザインがされているそうです。

他にも池についてや「水庭」になる前の元の土地についてなども解説してくださいます。「さらに詳しく知りたい。」という方は是非、一度水庭ツアーを体験してみてくださいね。全てのことに意味があり、全ての事が緻密に計算されて作られたという事が、解説によって理解する事ができます。ガイドさんの話し方も心地よく、どんどんと水庭の世界の中へ引き込まれていきます。

また、こちらにある、「水庭」への入り口ですが、入り口は2箇所あり、どちらも玄関の意味合いを持っているそうです。水庭は「玄関を入り、廊下を通り、リビングのような開放的な空間へと、建物のなかを巡るような」イメージでデザインされているそうです。お家のイメージで「建築としての水庭」を楽しんでください。

それでは「水庭」について知識を深めた後は、さっそく水庭へ入っていきましょう。
ここからはガイドさんと離れ、自由に探索する時間となります。ゆっくりと「水庭」を体験してください。

この日は小雨が降る午前中でしたが、薄暗い雰囲気と綺麗な緑が不思議で、絵本の世界に迷い込んだかのような日でした。
晴れの日は、キラキラと池の反射や木漏れ日を楽しめるそうですが、雨の日の「水庭」は幻想的な空間を感じられるので、どんな日でも楽しめるかと思います。

池に映る木々たち

水庭にはたくさんの生命が宿っており、カエルやアメンボ、トンボ、カブトムシなどたくさんの虫もみられました。

水庭の各所に飛び石があるのですが、それらは石上純也さんが提案するお勧めの立ち位置として配置されているそうです。また、池の中の飛び石は橋をイメージされているそうで、足元に注意しながらゆっくりとお進みください。
この飛び石にも建築家・石上純也さんのメッセージが込められているそうです。

飛び石には「小さな飛び石」と「大きな飛び石」があります。歩きにくい「小さな飛び石」を歩く時は足元に注意して緊張しながら歩いてください。そして、歩きやすい「大きな飛び石」を歩くときは周りの景色を楽しみながら開放的な気分を味わっていただきたい。「緊張と解放」の連続、そして人間のバランスを考えられた飛び石の配置になっています。

たくさんの飛び石に意識しながら、進んでいきます。「緊張と解放」の意味を体で感じながら鑑賞するお庭はとても貴重な体験です。

飛び石を一つ一つ踏みしめ、奥へ進んでいくとどんどんと木が大きくなっていきます。

お庭の面積が広いため、観覧している方の声なども聞こえてきません。木々を眺めていると、自分だけの自然を手に入れたようなそんな錯覚さえ感じてきます。

空を見上げても木々を感じ、小雨の日であれば木々が雨を受け止めてくれるので、傘を使わず進んでいけました。

ソファーに見立てた石の椅子

先ほど、「水庭」はお家のようなイメージでデザインされたと話しましたが、石の椅子もそのイメージから来ているものになります。
石の椅子があるのはリビングをイメージして作られた空間だそうで、ソファーとして置かれているそうです。
ゆっくりと腰をかけ、木々を眺めて解放のひと時を味わってください。

石の椅子に座り休憩した後は、さらに奥へと進みます。取材時は9月の前半でしたが、「水庭」ではすでに紅葉が始まっていました。

少しだけ紅葉が伺える水庭

水庭の左側奥に「築山(つきやま)」があり、その丘から眺めると「水庭」の全景を見渡すことができます。

築山から見下ろした「水庭」は、わぁっと声が出てしまうほど美しいです。頂上に到着した後に振り返って見る「水庭」は最高の景色でした。

築山の奥に休憩できるスペースがありましたので、疲れた方はこちらで休憩できます。

休憩スペース

休憩を終えたら、もう一度「水庭」へ。

ひっそりと佇む石の椅子たち

水庭には複数の道があり、ロングコース、ショートコーストとあります。また、最初にロングコースを進んで、少し体力に限界を感じた方は築山後にショートコースへ戻れる箇所がいくつかありますので安心です。いただいたガイドブックのエリアマップをみながらですと迷わず進めるのでおすすめです。「迷うのも楽しい。」と思われる方はマップなしでゆっくりと道を探して進んでみてくださいね。新しい発見があるかもしれません。

そろそろ水庭も終わりに近づいてきました。約40分ほど歩いていましたが、いつまで経っても気持ちがよく、離れたくないと思わせてくれる空間でした。

取材時は緑が綺麗な時期でしたが、木々は落葉樹の「コナラ」「イヌシデ」「ブナ」が大半を占めており、春は所々に生えている「ヤマザクラ」が花を咲かせ、夏は緑を楽しみ、秋は紅葉、冬は雪景色と春夏秋冬お庭を楽しめるそうです。

「水庭」を出るときは別の出入り口から出ました。

別の出入り口の眺めも美しい景色でした。

帰る際は特徴的な木を見つけて、ガイドブックの表紙、裏表紙と比べたりと最後まで楽しめます。

真ん中:特徴的な形の木

水庭の余韻に浸りながら、アートビオトープへ戻ります。

アートビオトープ館内を探索

「水庭」を楽しんだ後は、アートビオトープでお食事や工芸体験などもおすすめです。

建物の間にひっそりと存在しているこの「せせらぎの小径(こみち)」ですが、この奥へ進むと川が流れています。その川が「水庭」の池を循環している川になります。

この川の水が「水庭」の池に入り、その後、川に戻るようになっているそうです。

写真ですと見えづらいのですが、奥に池の水が出ている所を見つけることができます。肉眼ですともっとわかりやすいので、是非、実際の目で見て確かめてくださいね。

創造の小さき庭を探索

アーティストが残していった作品

ガイドさんが一番初めに説明してくださった、「創造の小さき庭」でアーティストさんが残した芸術作品を探したりと探索もできます。

アーティストが残していった作品

さまざまな形や色を使った作品が多く、庭の緑とアートが融合していて、この中庭だけでも楽しめる空間となっています。

アーティストが残していった作品
アーティストが残していった作品

もし、気になった作品があればスタッフの方に教えていただけます。

アーティストが残していった作品
アーティストが残していった作品

中庭でずっとお客を待っているように見えてくるのは気のせいでしょうか。作品を眺めていると、なぜか作品が生きているような、そんな不思議な気持ちになります。

工芸なども楽しめる

アートビオトープではガラス、陶芸、インディゴ染め、七宝焼など様々なワークショップ(体験型講座)ができます。予約ですとスムーズに体験ができますので、興味のある方は水庭体験と一緒にご予約して体験してみてくださいね。

自分だけのガラス作品が作れるガラス体験。

ガラス体験の工房

陶芸は目的やレベルに合わせたスタイルで打ち込めるスタジオとなっているそうです。初めての方や陶芸が好きな方どなたでも楽しめるスタジオなので、こちらも自分だけの作品を作ることができます。

スタジオ
好きな形、色を使って陶芸を楽しめます

カフェでゆっくりと

水庭ツアーの前後には「CAFE KANTAN」でゆっくり休憩するのもおすすめです。

CAFE KANTAN

雑誌なども置かれてあり、読み物と一緒にティータイムすることもできます。

メニューはカレーやパスタ、ワッフルなどがありますので、ランチとしてやカフェとしてご利用できます。

メニュー

「CAFE KANTAN」のプレースマット(ランチョンマット)はガイドブックにも使われている「水庭」のスケッチや、「水庭」の全体図になっていました。ちょっとした箇所にもこだわりがあって、お食事前もワクワクさせてくれます。

「水庭」の全体図

今回はランチとして利用させていただき、カレーを注文しました。

カレーにはサラダとスープがついてきます。

スープはキノコとお野菜が入った優しいコンソメ味のスープでした。温かいスープは身体に染み渡ります。

サラダはメニューにもある「25マイルガーデンサラダ」というもので、25マイル圏内で採れたお野菜だけで作られたサラダだそうです。どのお野菜も新鮮でシャキシャキとしておりトマトも甘みがありました。そして、酸味のあるドレッシングがかかっており、さっぱりといただけます。

カレーランチセット

カレーはシェフ特製の那須カレーで、黒毛和牛の牛すじを使ったカレーだそうです。余分な脂を抜くため牛は湯がいた後使用しています。ほろほろと口のなかでほどける食感のお肉を味わえます。カレーは辛すぎず、ほどよい辛さで最後まで美味しくいただけます。
カレーのお供に福神漬けやピクルス、オレンジなども付いてきて、色々味変を楽しみながら味わえます。

ミントジュレップ

そして、飲み物にもこだわりがあります。こちらは「ミントジュレップ」という紅茶の飲み物になります。アートビオトープの自家菜園で採れたミントをたっぷりと使用したドリンクです。

オレンジのフレッシュな香りとミントの涼しげな香りでごくごくと飲めるドリンクでした。

カフェの後はお土産も

カフェでゆっくりと過ごしたあとは、カフェの奥にあるお店でお土産も購入できます。

先ほど、カフェで使われていたプレースマット(ランチョンマット)もここで売られています。

プレースマット(ランチョンマット)

そして、水庭ツアーに参加してない方でもガイドブックがこちらで購入できます。

水庭の風景を思い出に残したい方や、絵ハガキとしてお使いいただけるポストカードなども販売されております。

水庭のポストカード
野草茶

外に置かれていた野草茶やアートビオトープのオリジナルソープなどもこちらで購入できますよ。

オリジナルソープ

オリジナルのグッズなどはご自宅に買って帰り、帰宅後も思い出に浸れるので、嬉しいアイテムですね。

ショップでお買い物も楽しんだら、入ってきたこちらの緑のアーチを抜けて帰ります。
たくさんの思い出を作られた人が行き来するアーチ。こちらのアーチも最初と最後で印象が違ったように感じてきます。

今回はアートビオトープの「水庭」をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
“庭”という名前ですが、自然にできた森なのでは?と思えるほど美しく、人工的な違和感を感じさせないお庭でした。「水庭」に入った時は静けさと澄んだ空気の心地良さによって、心が自然と癒されていく感覚もありました。
秋に向けて紅葉が進んで緑から赤色へと変化を楽しめるのも「水庭」の良さです。

日々の喧騒から離れ、アートビオトープの凛とした雰囲気、そして「水庭」の静けさや空気感を味わい心を癒してみてはいかがでしょうか。

※本記事の情報は関係者さまからご掲載の許可をいただいております。